独自技術を保有する企業は、他社と提携する際にノウハウの流出や不利な契約に注意する必要があります。特に、開発を行うベンチャー企業では、独自の技術情報が企業の生命線であるため、ノウハウの流出防止や事前の秘密保持契約の締結に気を配るのは当然のことです。しかし、提携先が将来、自社の技術を利用せず、利益の分配が得られない状況も想定できているでしょうか?そのような事態は避けたいものですが、万が一に備えて、冷静に対策を講じておくことが大切です。
ただし、このような契約交渉は、立場が弱い企業にとって切り出しにくいものです。そんなときに役立つのが、中小企業庁が2021年に公開した「知的財産取引に関するガイドライン」です。このガイドラインは、公的機関が発行する中立な資料として、相手に条件提示しやすいツールとして利用できます。
このガイドラインでは、以下のように取引の段階ごとに、適切な対応や考え方、具体例が分かりやすくまとめられています。
(1)契約締結前(取引交渉段階・工場見学など)
(2)試作品の製造・共同開発
(3)製造委託・販売委託・請負販売
(4)特許出願・知的財産権の無償譲渡や無償実施許諾
中小企業の経営者や知財担当者は、時間があるときに一度目を通しておくと良いでしょう。
さらに、同じページには契約書のひな形もダウンロードできるようになっています。このひな形をもとに、実際の取引に合わせて条項を調整する際には、その変更理由を明確にすることにしておけば、双方が納得のいく契約書が作成できるでしょう。
正しい契約の形を知らずに進めてしまうと、気づかないうちに自社に不利な契約を結んでしまう可能性があります。そうならないためにも、このガイドラインを一度読んでおくことを強くお勧めします。