経産省の調査によると、多くの日本企業では「標準化戦略」が経営戦略に組み込まれていません。令和3年度の調査では、上場企業565社のうち72%がルール形成戦略を採用していないという結果が出ています(日本産業標準調査会 第4回事務局資料参照)。
その背景には、経営層の理解不足や現場への浸透の遅れがあると考えられます。また、企業ごとに標準化のメリットの大きさが異なることも、導入企業の少なさに影響しているかもしれません。
標準化のメリットとは?
ここでいう標準化のメリットとは何でしょうか?ざっくり言えば、「市場のルールを自社主導で決められる」ことが最大のメリットです。具体的には、以下のような利点があります(「新市場創造型標準化制度について(経産省)」参照)。
① 粗悪品を市場から排除できる
市場に粗悪品が出回っていると、ユーザーはどの商品を選べばいいのか分かりません。自社が提案する基準が標準化されれば、品質の低い製品を排除し、自社製品の価値を高めることができます。
② 自社製品の性能を分かりやすく伝えられる
評価方法の規格を作ることで、取引先に自社製品の性能が伝わりやすくなります。特に、自社の技術が優れている場合、標準化を通じてその価値を証明し、市場で有利に立つことができます。
③ 新しいコンセプトの製品が受け入れられやすくなる
革新的な製品は、顧客企業内で「前例がない」として決裁が下りにくいことがあります。しかし、標準化によって「公的なお墨付き」を得ることで、取引先の意思決定をスムーズに進めることが可能になります。公的機関の調達等で法規が規格を引用する必要がある場合も、極端な場合としてこれに含まれると言えます。
④ 自社開発の測定方法を標準にできる
例えば、測定機器メーカーが独自に開発した測定方法を標準化できれば、規格の裏付けを持った製品として市場に受け入れられやすくなります。これにより、市場拡大を有利に進めることができます。
標準化の恩恵を受ける企業とは?
裏を返せば標準化のメリットを特に活かせる企業は、以下のようなタイプの企業です。
✅ 市場に粗悪品が多く、品質の差が分かりにくい製品を扱っている企業
✅ 独自の技術を持っているが、市場で十分に評価されていない企業
✅ これまでの常識を覆すような製品を開発しているが、なかなか受け入れられない企業
✅ 優れた測定機器を開発しているが、市場で主流の方式とは異なる企業
特に、ブランド力のある大企業は既に市場での信頼を獲得しているため、標準化の必要性は低いかもしれません。しかし、まだブランド力が確立されていない中小企業にとっては、標準化は市場での認知度や取引先の信頼を高める強力な武器となります。
「標準化=市場のルールを自社主導で作る」 この視点を持つことで、企業の成長戦略に新たな道が開けるかもしれません。