新市場創造型標準化制度とは?
標準化は、企業にとって強力な市場拡大のサポートツールです。しかし、自社技術に合った規格を作ろうとしても、業界団体に属していない場合や、既存の枠組みでは対応しきれないケースが多々あります。
そのような場合にこそ、新市場創造型標準化制度(以下、新市場制度)が役立ちます。新市場制度は、新しい市場の創出や産業競争力の強化を目的として、政府(経済産業省)が企業の標準化活動を支援する制度です。特に、日本発の技術・ビジネスモデルを早期に標準化し、国内外での普及を促進することを狙いとしています。
これにより、JIS規格化に向けた原案作成その他の場面でJSA(日本規格協会)による手厚い支援を受けられます。業界の枠を超えて新たな規格を作るチャンスが広がります。特に、中小企業にとっては効果の大きい制度です。
本格的な取り組み前に準備すべきこと
新市場制度の採択を目指すなら、まずは以下の準備を進めましょう。
1.専門家に相談する
自社の技術が新市場制度に適しているかを判断するため、標準化戦略の専門家(例えば、自社技術をよく知る弁理士、中小企業診断士)に意見を聞くことが大切です。第三者の視点があると、より客観的にチェックできます。
2.経産省のチェックポイントを活用する
経産省が公開しているビジネス面のチェックポイントを確認しましょう。これにより、事前にネックとなる点を把握し、優先順位をつけることもできます(下表)。
3.JSAの標準化アドバイザーに相談する
JSAのサイトで「面談申込書(企業直接申込用)」をダウンロードし、必要事項を記入後、「総合標準化相談室」へEメールで申し込みます。申込書の記入は、標準化戦略の理解ができていればスムーズに進みますが、専門家の協力を得るとさらに効率的です。
「標準化をビジネスに活用するためのセオリー(経産省)」より引用
相談時のポイント
JSAの標準化アドバイザーとの相談では、以下の点を意識しましょう。
・関連する規格や団体を調査する
自社技術に近い分野の既存規格や関連団体の有無を確認しましょう。事前にある程度確認できるかもしれませんが、標準化アドバイザーが詳しいので、JSAとの面談時に相談するとスムーズです。既存規格や関連団体があれば、新市場制度の活用は困難です。
・満たさなければ進行できない条件を把握する
新市場制度の対象となるのは経産省の管轄分野です。例えば、医療技術なら厚労省、建築技術なら国交省の管轄となるため、早めにチェックしましょう。このような管轄の条件や既存規格や関連団体の条件は、満たされるか否かが明確で、対策がかなり限られているので早めに決着をつけるべきです。
・評価方法の確立が必要かを確認する
中小企業では、技術は確立していても評価方法が未確定なことも多いです。その場合、大学や研究機関と協力し、一から評価方法を組み立てる必要があります。JSAがある程度ネットワークを持っているため、JSAに相談するのも一つの方法です。
・課題の優先順位を整理する
十分に解決できる課題と、長期的に取り組むべき課題を整理し、優先順位をつけましょう。特許取得などの知財面や評価方法の課題は、長期的に取り組むものであり、早めに着手すべきものと言えます。
・達成までのスケジュールを見積もる
標準化には試験評価が必要な場合があり、時間がかかることもあります。計画的に進めるため、全体の流れを逆算してスケジュールを立てましょう。
まとめ
新市場制度を活用すれば、中小企業でもJIS規格化を実現できる可能性が広がります。効率よく進めるために、事前準備をしっかり行い、標準化アドバイザーとの相談を有意義なものにしましょう!